第82章

北村瑠璃は子供を抱き上げ、冷たい目で山田澪を一瞥して、家の中へ入った。

外は小雨が降っていて、皆もそれぞれ家に入っていった。

山田澪はまだその場に立ち、一家が家に入るのを見ていた。

北村誠はかがんで地面に落ちた果物袋を拾い、散らばった果物を集めて袋に入れ、山田澪のそばに来た。

「義姉さん、この果物は傷んでしまいましたが…」

山田澪は視線を動かし、男を見た。彼の顔にはまだあのほどよい微笑みが浮かんでいた。親しすぎず、かといって疎遠でもない。

その笑顔はまるで仮面のようで、最も本当の姿を隠している。誰も彼の笑顔の下にある真の表情を窺い知ることはできなかった。

山田澪は手を伸ばして果...

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